Embers
Because of sun



エース隊長に腕をつかまれ、潮風に揺られぶらぶらとなびく私・・・の足元は海面
今回は(てゆーか今回も)私は100%悪くない! が、毎度の事ながら隊長に逆らえないのは
隊長が私のトップシークレットを握っているからだ
(でなきゃ、目覚まし代わりも給仕も掃除もしない!)



* * *



事の始まり・・・あれは、私がまだ2番隊副隊長に就任したばかりの時だった
海の猛者が群れを成す白髭海賊団 数少ない女戦闘員である自分が副隊長の座に選ばれた時は
何とも感慨深い気持ちだった 白髭海賊団でも女性が役職に付くのは初めてだったそうで
その日の就任祝いという宴会はいつもにまして盛大なものだった
そんな雰囲気に呑まれ、いつもよりも飲みすぎてしまった私は千鳥足で自室に戻った
そして、私のトップシークレットである趣味、人形遊びを一人ハイテンションで始めてしまったのが運の尽きだった



「ねぇトム」
「なんだい、ハニー」
「私、副隊長に選ばれたの♪」
「流石はハニーすごいじゃないか」
「うふ、ダーリンのお・か・げ」
「あぁ、でも僕は心配だ。君にもしものことがあった・・・・僕は、僕は・・・」
「そんな顔しないでダーリン」
「そうだねハニー、もし君に何かあった時は僕が死んでも君を守るよ」
「嬉しいダーリ・・・」
両手に一体ずつ人形を持ち、一人二役で甘い台詞を声を大にして人形ごっこに熱中していると
何処からともなく外の冷たい空気が頬をかすめ、何やら背中に強烈な視線を感じた



(まさか、扉はいつも閉めて・・)
「お前、何やってんだ?」
(なかったー!!!)
「いや、あの、エース隊長・・・いつからそこに?」
冷や汗をだらだら垂らしながら、どうか聞かれてなかったことを祈りつつ隊長に問う
「ねぇ、トムってとこから」
(全部見られてるしー!!!)
「お前、見かけによらず乙女チッ」
「わー!!言わないでー!!」
真っ赤になって隊長の口を両手で塞ぐと、隊長は手の下の口角をニヤッと上げて私のてを退けポツリと呟いた
「オーケー、秘密は隠してやるよ」
「あ、有難うございま・・・」
ほっと安堵のため息をつき隊長を見上げると、何とも信用なら無い笑顔で
「明日からよろしくな、副隊長」
そう言って、隊長は私の肩をポンッと叩き去っていった
翌日から始まった副隊長ライフの説明は目頭が熱くなるので割愛させて頂きます
・・・そして今に至る



 * * *



「おぃ、
「・・・・」
「どーなんだ?」
先ほどの一言で、私がこれ以上言い返せないのを分かっているくせに
ニヤニヤと至極楽しそうに聞いてくる隊長は絶対に性格が歪んでいる
人でなし!サド!馬鹿!半裸!
「すみませんー」
「何がだ?」
(調子に乗りやがってー!)
「・・・・己の実力不足を隊長のせいにして、暴言を吐いてしまったことが、です」
「分かればいいんだ」
いたずらに成功した悪餓鬼のように、にんまりと笑うと
一気に私の身体を引き上げそのまま隊長の胸に飛び込まされた
どさくさに紛れて腰に手を回さないで下さい。
「・・・有難うございまーす」
棒読みのお礼に、思い切りの笑顔で返すなんて隊長は馬鹿だ
腰に回された腕にかすかに力が込められて、隊長の胸板が近づく
そんなことで、動揺するなんて私は馬鹿だ
「気にすんな!」
シシッと笑う笑顔が眩しいのも、腰に回された手が触れるところが熱いのも
耳に熱が集まるのも、みんな隊長の後ろにある太陽のせいだ!!






(断じて恋なんかではない)