船の雰囲気が一変したあの日から 貴方が何かを覚悟していたこと

今となって分かっても もう 後の祭り

仲間殺しを犯した裏切り者に 制裁を加える為 支度をする貴方は

あの哀しみに包まれた夜から 一度も私を抱かなかった

いつも通り太陽みたいな笑顔で 私を抱きしめて 唇を重ねてくれたけど

それ以上は求めなくなって その分 泣きそうなほどの優しさを向けてくれた

いつも冗談ばかり言って 軽口をたたく貴方だけど

肝心な事は 自分の中にしまう癖があるのを知っています

貴方は本当に強いから 死に逝くつもりはないのだろうけど

それでも 何かを失う可能性を 覚悟していたんでしょう

臆病な私は 薄々感付いていた不安要素を 明確にされたくなくて

貴方に何も聞いてあげられませんでした 彼女失格でしょ?

それなのに 傷つくことに関しては 一人前で

毎夜 許されるはずも無い涙を流しています

拭ってくれる貴方は居ないので 流れたそれは 枕に染みを作るけれど

貴方が懸念した不安は 皮肉にも的中してしまったようで

数日後のニュースペーパーで 公開処刑 の文字を目にした時は

本当に 心が引き裂かれる思いでした



兎に角 貴方がこの船を去ってから 私は酷い後悔と自己嫌悪に陥って

だから今度は 悔いを残さないように 行動することにします

例えその結果が 明るくても 暗くても 怖がらずに 目を逸らさずに

海底を突き進む コーティングが施されたモービーディック号

愛しい恋人 エース 貴方に会えるまで あと少し