フロアから離れたテーブルでお酒を飲みながら
ネオンの下でゆらゆら踊る人間を傍観する
なんともいえない感じがすごくいい
サチと一緒にクラブに来たのはいいけど
彼女はいつも男について行ってしまう
今日もトイレに行くといってすでに30分経過
はぁ・・・と軽くため息をつく このグラスで最後にしよう
そう考えながら ぼー・・・ と人物ウォッチング
その中にひときわ目立つ金髪の外人が一人
ゆっくりと近づいてくる 揺れる髪は金糸のようだ
黒いレザーの手袋をはめた手で 椅子を引き 私の相席に無言で座る
手の力が抜けグラスからアルコールが流れ出た
流れ出た液体はゆっくりと流れ私の服を濡らした
我に返りグラスを立て直すが時既に遅し
金髪の男は 「使えよ」 と黒いハンカチを差し出した
「ど・・どうも」 とぎこちなく礼を言いそれで服を拭う
頬杖をつきながら突き刺さるような視線で此方を見ている
「名前は」 と問われ 「 ・・・」 と一言返した
何に緊張しているだろうか 咽が乾いて言葉が上手く出てこない
「、洗って返せよ」 予想外の言葉に一瞬動きが止まってしまった
「は・・・・ぃ」 しどろもどろ答えると 男は小さく笑って紙を差し出した
名前と携帯番号だけが書かれている名刺
受け取ると 「じゃあな」 と言って去っていった
変な男だ 一体何をしに来たのか
甘ったるいお酒が染み付いたスカートはどうにも綺麗になりそうに無い
きっと染みが残ってしまうだろう
(高かったのに・・・)
男の置いていった名刺の番号をすぐに登録した
(mello・・・か・・・どこの国の人だろう)
こんなにドキドキしているのは何年ぶりだろうか
グラスの残りを一気に飲み干し腿に張り付くスカートで
いい年こいてスキップしながら家路を急いだ
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(恋が始まる)