「でもさー、メロとこんな場所で会うなんて思ってもみなかった」
「・・・」
「何でモールに居たの? しかも一人でっ ぐふっ!」
食べながら話したせいで 麺が咽に詰まった
「食べるか話すかどっちかにしろ」
はぁ・・・ と呆れ気味にため息をついて 一人優雅に食事をしている
メロの口はガサツで乱暴な言葉ばかりを発するくせに すごく綺麗に物を食べる
家ではテーブルに足を乗せながら電話したり 至極 行儀が悪いのだけれど
メロの纏う雰囲気は とても気品に溢れていて 品がいい
いや もっとしっくりくる言い方・・・ なんていうか・・・そう、 高潔
それが私の持つメロの印象
グラスに注がれた水で 咽を流す
「・・・はぁ、 死ぬかと思ったー」
「そんなんで死ぬかよ」
右の口角だけを上げて にやっと笑うメロの表情
見るたびに 女にもてるんだろうなー と思わせられる
「それより、何でここに居たわけ?」
「ちょっとな」
スッと目線を外す それは無言の合図 つまり これ以上は聞いてはいけない
「ふーん」
一緒に暮らしていく中で なんとなくルールが出来上がっていた
1つ目は 互いに必要以上干渉しないこと
2つ目は 家賃も光熱費もすべてメロが負担すること (これはメロが言い出した)
特に 同居し始めの頃は1つ目のルールの境界線をつかめず
何度かメロの逆鱗に触れてしまい 死ぬかと思った (メロの殺気は半端ない・・・)
知りたくないと 気にならないと 言えば嘘になる
けれど メロの隠す秘密を知ってしまったら もう二度とメロには会えない
そんな気がする だから 聞きたくない これが本心
4人掛け席の空いたスペースに置かれた紙袋を見ながら
「お前は何をそんなに買ったんだよ」
「えっと 前から欲しかったワンピースに踵の可愛いパンプスにワンピに合わせるレギンスにー・・・」
「分かった もういい」
「ちょっと! 話を振ったのはそっちのくせにー!」
「もう十分」
「あっそうですか」
「俺はコーヒー頼むけど はどうする?」
「じゃぁ カフェモカで あっ もちろん・・・」
「ホットだろ?」
「分かってるじゃなーい」
しばらくして飲み物が運ばれてきて メロはポーションミルクを1つ入れた
「わー おいしそー」
湯気とチョコの甘い香りが漂うカップに口を近づける
「おい 、ちょっと待・・・」
「あっつ!!」
湯気が出ているのは熱いからな訳で 猫舌の私は大抵いつもこうなる
「・・・だから待てって 何度言っても学習しねーな」
「そんなこと言われたって・・・あー、熱かった」
「お前の頭は鶏かよ」
「コケコッコー」
「死ね」
メロとこうして 他愛も無い話しをていると すごく楽しい
きっとメロは頭がいいから 今まで出合った人の中で 一番会話上手なんだ
だからきっと こんなにも楽しくって 永遠に続けばいいのにって思うんだね
ふふっ・・・ と笑う私を 変な物でも見るように 怪訝そうな表情のメロ
「何だよ」
「ふふっ・・・ いやぁ メロとおしゃべりしてるとさー ずーっと続けばいいのにって思っちゃうんだ」
「・・・・ずっとねぇ」
メロは訝しげな表情をするけど 話を続けた
「たぶんそれって メロが私の出合った人の中で一番・・・」
「なっ! 馬鹿 それ以上言うn」
「頭がいいからだと思うんだよねー」
そう言い終えると なんだかさっき 一瞬慌てたメロは意気消沈したように
脱力しながら 「そーだな」 と一言
遠い目で窓の外を眺めつつ コーヒーを啜るメロが
なぜかセンチメンタルな雰囲気を放っていたのは気のせいだろうか・・・
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(俺は何を焦っているんだ・・・はぁ・・・)