は歩幅が小さいらしく 俺の普段のペースだと小走りしないと駄目らしい
仕方が無いからペースを落としてやると 自然と隣に並ぶと目が合って
へへ〜っと嬉しそうに笑った 間抜けで幸せそうな顔
俺がキラを追っていて 人を何人も殺していて 犯罪に手を染めている
そんな人間だと知った後でも お前はそうやって笑っていられるのだろうか
大きな公園の中を通ると 家族連れの賑やかな声が遠くに聞こえた
は落ちている枯葉を狙いながら歩いて パリパリと その音と感触を楽しんでいるようだ
(こいつは一体何歳なんだ・・・)
東洋人なのに大人びて見えるのは 整った顔立ちの為だろう
黒く艶やかな長い黒髪は 時折 目を奪われるほどだ
自国でもアメリカでもさぞもてるのだろう そんなことをぼんやりと考える
「メロー? おーい?」
気がつくと俺の足取りは止まっていて 目の前には不思議そうに顔を覗き込むが居た
「あぁ、悪い・・・」
気がついて また歩き始める
「なんか今日のメロ ちょっと変だよー?」
「・・・・」
変なのはお前の頭と行動だ そう思ったけれど 言葉を飲み込んだ
「急に返事に詰まったり 慌てたり 脱力したり 立ち止まったり・・・」
(こいつ・・・変なところは目敏いんだよな・・・)
メロは面倒くさい話題のきっかけを作ってしまった 自身の行動を悔いた
(はぁ・・・めんどくせーなー)
「ほらー!またぼーっとして!」
「はぁ・・・」
「あのねー! ため息ばっかついてると幸せ逃しちゃうよ」
「幸せね・・・」
その時 自分がどんな表情をしているかなんて 見ることは出来ない
けれど 幸せを掴む事の許されない己の運命を思った時
俺の顔を見ていたの表情が 辛そうに 悲しそうに歪んだのを見て
自分の表情を 心情を 悟ったんだ
あぁ 俺は あの雨の日に切り捨てた未来を 捨てきれてなかったのか
平和な世界で暮らして 普通の生活に心地よさを覚えてしまっていたのか
早いうちに気づけてよかった こいつとの生活を長引かせてはいけない
平和と平穏に心を飲み込まれてしまっては 暗闇に踏み出せなくなってしまう
今まで俺が奪ってきた物は 命は 意味をなくしてしまう
もう こちら側に戻ることは許されないんだ
「あー! メロ! 見て!!」
突然大声を張り上げて俺の思考を遮る
次の瞬間腕を強く引かれ なにやら前方にある出店に促される
「チェロスだよー! あ、今日までだってー!ねぇ 食べよーよ」
「さっき食ったばっかだろ」
「甘いものは別腹!」
「俺はいらな・・・」
「おじさーん シナモンとチョコ一個ずつね!」
(聞いてねー・・・)
仕方なく 歩きながらに渡されたチェロスを食べる
(こんな姿マットに見られたらぜってー死ぬまで馬鹿にされる・・・)
「おいしーねー」
「まぁまぁだな」
「メロの一口ちょーだい」
いいと言う前に勝手に手を伸ばして食いつく
「うん! チョコ味も美味しい!」
「そりゃ よかったな」
ほら まただ こうやって明るい世界に心地よさを感じてしまう
に引っ張られて どんどん奥に進んでしまう こんな訳には・・・
「ねぇ メロ」
「あ?」
「また・・・食べに来ようね。」
「ばーか あの出店は今日までだって お前言ってただろ?」
「あの出店はね 毎年秋頃に期間限定でやってるんだ」
「毎年ってことは」
「そう だから 来年まで待って また一緒に食べるの」
約束ね? そう言って控えめに笑う
本当に今日の俺はどうかしている
また 言葉を失って 立ち止まってしまった
は馬鹿な女だけど 賢い女だ
俺の素性を 仕事を 過去を知らないくせに
俺の中の闇を見透かしているようで 今だって
俺が 長居してはいけない そう考えた直後に
来年の約束を取り付けるんだから たいした奴だよ
そうだな 出来ることなら来年も食べてやってもいい
それが許されるなら
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(守れないかもしれない約束ひとつ)