月曜日の朝はいつも気が重い 今週も忙しくなるのだろう
ベットから降りて ニュースペーパーに目を通す
KIRA
その文字を見ない日は無いと言うほど 私達の生活に浸透している
犯罪に無縁の私はKIRAの記事に 大抵の場合 興味を持てない
どうせ 過去の犯罪者が処罰を受けたのだろう
どうせ 信者が神の御力だと崇め奉っているのだろう
KIRA
正義かどうか 神かどうか 正しいかどうか なんて
私のちっぽけな脳みそでは 到底理解できないけれど
1つだけ確かなのは 絶対的な力と恐怖による抑圧的な方法であるということ
記事によると 今回裁かれた人間が心臓麻痺で息を引き取ったのは
私達が昨日 買い物をしていたモールだった
あまりにも広いモールだったし KIRAによる死を大げさに騒ぐことは禁じられている風潮がある
気がつかなかったのも無理はない
でも ふっと頭をよぎった予想
あまりにも不吉で そんな訳ないと自分に言い聞かせたけど
私の予想は家を出てから帰ってくるまでに どんどん膨張していくばかりだった
そんなことあるはずないじゃないか いくらなんでも・・・
だけど 昨日の帰り道 公園で見たメロの表情は今にも泣き出しそうで
今にも目の前から消えてしまいそうで どうしようもなく不安になった
メロ 貴方は KIRAとは無関係だよね・・・
そう何度も心の中で問いかけるけれど
すごく気になって夜も眠れなさそうだけれど
きっと 私にはメロにそれを問いかけることなんて 出来ないんだ
だって そしたらその後は・・・
日が落ちるのが早くなって 6時過ぎにはもう 空が夜を主張している
駅の近くのマーケットに寄って電球を買う
(朝 リビングの電球が一個切れてたんだよねー)
ついでに メロの愛食しているメーカーの板チョコも数枚籠に入れた
(これを餌に電球を替えてもらおう・・・)
マーケットの安そうで今にも破れそうな薄い袋を ガサガサと音をたてながら歩く
アパートの近くに着いて 上を見上げると
3階の隅の一室には 明かりが灯っていた
(今日はメロ居るんだー)
週の半分くらいは 夕方暗くなるとフラリと居なくなって
早朝に帰ってきたり来なかったりを繰り返している
実際 共同生活をしていると言っても 生活のリズムが真逆だから 一緒にいる時間は殆どない
(メロのライフスタイルが異常なのよ・・・)
メロが居る部屋に帰る 自然と軽くなる足取り ただいまー と玄関を開けると
おー と奥の部屋から返事か返ってくる
袋をキッチンに置いて 洗面所に向かう
もう夕飯食べたー? と洗面所から大声で問いかけると
「お前でかい声だすな・・・ まだ食ってねーよ」
ガラス越しにメロと目が合った
「びっくりしたー!! だって メロ奥の部屋に居たじゃん」
「なんか食うもん買ってきたのか?」
「私のポケットマネーでチョコを買ってきてあげましたー」
「サンキュー」
手をひらひらと振って まったく感謝のこもってない(様に聞こえる)お礼の言葉を言い
キッチンに置かれた袋をガサゴソと漁りに 洗面所を去っていった
(たくっ・・・メロの奴め 感謝しなさいよね)
化粧を落としてリビングにいくと ソファーを一人で占領し
テーブルの上に組んだ長い足を乗せながら チョコをバリバリ食べているメロが居た
「ちょっと詰めてー」
「無理」
「無理じゃない! てゆーか このソファー私のお金で買ったんだから!」
「お前は小学生かよ」
「席を詰めないメロの方こそ小学生じゃない」
「・・・」
「ほーら 言い返せない!」
メロを口で負かせるなんて 今日の私はなんて冴えてるのだろう
「は細いから 空いてるスペースで足りると思ったんだが・・・」
「なーによ! この間は重そーって言ったくせにー」
一向に動こうとしないメロが 上目使いで優しげに私を見上げた
「あれは冗談だ 本心は・・・華奢で折れそうだなって心配だ」
「メロ・・・」
醸し出された優しげで甘い雰囲気 前髪から覗く綺麗な両眼
それらによってすっかり機嫌を直し メロの横の空いた狭いスペースに 意気揚々と腰を下ろす
「まぁー 座れないこともないかなー」
「・・・・・っく・・・」
隣のメロが俯きながら肩を震わせていることに気づき
「ちょっと・・・ どっか苦しいの!?」
心配して手を差し伸べた瞬間
「くっ・・・はははははっ!!」
顔を上げて反り返りながら笑うメロ
「え? 何?」
「あーマジ腹いてーよ」
そう言いながら目尻に涙をキラリと輝かせながら
「お前って本当に単純だな」
その言葉に 身体が停止する
「そんなんじゃ・・・いつか変なセールスにぜってー引っかかるって・・・くくっ・・・」
さっきのメロの甘い言葉と雰囲気がフラッシュバックする
落ち着いて考えればあまりにも不自然な流れだったじゃないか
それを真に受けた私って一体・・・
だんだんと顔に熱が集まるのが分かった
「ははっ! 今更赤くなるなんて 反応鈍っ」
言いたい放題 馬鹿にし放題のメロに一発お見舞いしてやろうとするが
ヒラリと華麗にかわされ メロの胸元に倒れこんだ私は 不覚にも支えられ
挙句の果てに 真近にあるメロの口から バーカ と何とも心のこもった暴言を頂いた
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(やっぱり予想は私の思い込みかも だってメロはこんなにも暖かい)