山済みになった書類を見てため息をひとつ

メロとマットは買出し 私は留守番

真夏の炎天下 外に行って重い荷物を運ぶなんて 無理

そう言って 留守番係に立候補したはいいけど

帰ってくるまでに この山済み書類を仕上げるなんて 無理

本日二度目のため息をついたところで 勢いよく二人が帰ってきた

マットがマーケットのビニール袋を両手に ガサガサ鳴らしながら

咥えタバコが落ちそうなくらいの ビッグスマイルで言った

!海に行くから支度しろ!」

「・・・はい!?」








中古の赤いオープンカーで海を目指す

「でも 何でいきなり海行くことになったの?」

風で乱れる髪を抑えながら 助手席から運転席のメロに問いかける

「あー マットが前々から海連れてけって五月蝿かったんだよ」

「まぁ 確かに今日は絶好の海水浴日和だけど・・・」

「でもメロだって ビーチで冷たいビール飲みてーって言ってたじゃん」

後ろの席で広々と座りながら 煙草を吸っているマットが口を挟む

「マットが海行きたい理由は 水着の女の子ウォッチングでしょ」

「図星だな」

そう言ってメロが軽く笑う

「はー? それはメロだって同じだろ?」

「俺は冷たいビールが飲めればそれでいい」

「そーよ! メロはマットみたいにそーゆーことにガツガツしてないのー」

「いやいや が知らないだけで実はこいつ・・・うおっ!!」

「きゃー!!」

マットがメロの秘密を暴露しようとした瞬間 メロがハンドルを切って車体を揺らす

「なっ 何するのよ! 死ぬかと思ったー・・・」

心臓を押さえながらメロを睨む 

メロはそんな私を鼻で笑って 後ろのマットに一言

「マット 海に行きたいんだろう? だったら黙って座ってろ」

有無を言わせぬメロに 目を見開いて頭を縦に勢いよく振るマット

・・・・どうやら後部座席は相当揺れたらしい

本気でびびったらしいマットを見て 思わず吹き出してしまう

「プッ・・・ あははっ マットカッコ悪っ!」

「うるせー」

真っ青な空の下 真っ赤なオープンカーが一台

まるでポップアートみたいな配色

ハイウェイをスピード上げて疾走する

「あっ!海!!見えてきたー!!」

助手席から思わず立ち上がり 声を上げる

「おまっ あぶねーよ」

ギョッ と効果音が聞こえそうな程 目を見開いて

私の洋服を引っ張り 座るよう促すメロ

「え? どこどこ?」

後ろのマットも立ち上がって 小さく見えてきた海を探す

その瞬間 またもやメロが わざとスピードを上げたから

立ち上がったマットはバランスを崩して 後ろに倒れた

「痛っ・・・メロ! てめー!!」

「あははっ マットだっさーい」

いたずらっ子のような笑みでメロが言う

「マット 立ったら危ないだろう?」




* * *




「きゃーーーー!!! 海ーーーー!!」

ガバッ と服を脱ぎ捨てて 水着一丁 海に向かってダッシュ

「おいっ  転ぶなよ」

保護者的メロの忠告など 最早には届いていない・・・

「なーメロ、ってやっぱいい女だよな」

そんなを見て マットがぼそりと一言

「マット、を変な目で見たら・・・殺す」

「変な目って・・・至って健全健康男子の感想だろ」

「・・・兎に角、に男が寄ってきたら追い払えよ」

「YES, SIR!!」

そんな二人の心配など 微塵も知らないは 一足先に海へ入ってはしゃいでいる

「メロマットー! 早く来なよー!」

海水に浸かりながら 大きく手を振る

眩しい太陽が水面に反射して キラキラ

真っ赤な三角ビキニ姿も キラキラ

100万ボルトのの笑顔も キラキラ

それを見た二人は ゴクリ・・・と喉を鳴らし 海目指してダッシュ!!

一歩先を走るマットの海パンを掴み 追い抜くメロ

「うおっ! メロッ! ルール違反だぞ!」

「ははっ 俺の辞書にルールなんて言葉は無い」

馬鹿馬鹿しく低レベルな争いを繰り広げながら走る二人

勢いよく飛沫を上げて海へダイブ!!

俺は冷たいビールが飲めればそれでいい とか 水着の女の子ウォッチング〜♪

なーんて言ってたけど 何だかんだ 海を満喫している2人

年相応の表情をしている2人を見て ヒッソリ喜ぶ




* * *




「あれ?は?」

「ビール買いに行かせた」

パラソルの下でゲームをしているマット

彼の口元からポロリと煙草がビニールシートに落ちる

「おい 火がついたら危・・」

「バカヤロー! を一人で行かせるほうが危ねーよ!」

隣で難しそうな本を悠長に読みふけるメロを揺さぶる

メロはため息をついて読んでいた本を閉じた

「心配するなマット 俺がそんなヘマをすると思うか?」

「・・・何かしたのか?」

「まぁ が帰ってくれば分かる」

ニヤッ と意地悪そうに笑うメロの表情に

まだ知らぬの現状を不憫に思うマットだった・・・

(あーぁ、の奴・・・ついてねーなぁ)




* * *




「メロの奴! 信じらんない!!」

ドカドカと歩きながら 眉間に皺を寄せる

その両手にはビールの入ったビニール袋

水着の上からメロに渡された 黒いロングワンピースを着ている

「妊娠どころか結婚だってしてないのにー!」

ワンピースの下には腹部にビーチボール(小)を固定させられ

その姿は立派な妊婦さんだった

「よし 行って来い」

満足そうに笑い送り出すメロ 当然拒否権などあるわけがない・・・

「メロの奴・・・許さない・・・」

ぶつぶつ文句を言いながらも ビールが冷えているうちにと思い

帰路を急ぐ律儀な・・・

「あ! いいこと考えた♪」

にんまりと笑いながら袋のビールをシェイク!!

「これくらいの罰は受けてもらわなくっちゃ!」




* * *




「ブッ・・・ お前その格好・・・」

マットが必死に腹を抱えて笑いをこらえる・・・が 笑っている

「はい 買ってきたわよ」

「サンキュ」

「もう ビーチボール外してもいいでしょ?」

「あぁ・・・」

ガサガサと袋から缶を取り出し 1つをマットに投げる

「おっと! サンキューな♪」

無垢なマットの笑顔に若干心が痛むだが

笑ったんだから同罪よね

二人がほぼ同時に蓋を開ける


ブシューーーーーッ!!!!


「ぅわっ!! 冷て・・・」

「ちょっ 何だよこれ!?」

キラキラブロンドの前髪がビールでベトベトのメロ

顔面にビールを浴びて慌てるマット

「あははっ! お返しだよーん!」

あっかんべーして 黒いワンピで走り出す

「ッ・・・てめー!」

「あ! メロ待てよー!」

おっかない顔して追いかけてくるメロ

とりあえずメロを追うマット

笑いながら逃げる

たまにはこんな日もいいじゃない
















(お次は川でバーベキュー!!)